コラム
・昔話

昔話
第3回「私の話」
2002/09/12 Kitajima

エンジンの音が止んだ。「おい、須藤君、現場の状況はどうか」「はい、順調に進んでいます」タオルでほおかぶりをして50CCのバイクに乗ってきた一見、農家のおやじさん風の人である。今は亡き先々代の吉春社長である。私は須藤君(私と同期の新入社員であった)と呼ばれた事に対してはその時、午後からの作業の丁張りを出すのに全神経を集中していた時でもあったし、山の中でやぶ蚊と戦いながら、今から考えると肉体的にはかなりハードであったが、現場の仕事が面白くなってきた時でもあったので、名前を訂正することの余裕も無かった事、又、その事自体私にとってはどうでも良かったし、ただ、めずらしい人が現場に来たものだと新鮮な感じと、虚をつかれたこともあり一瞬ではあるが相応の緊張感が起こったのではないかと今から考えると思われる。少し“くどく”その時の精神状態を自ら今、分析してみたのは、私がその時「順調に進んでいます」と答えたことである。その頃、新兵の私には現場が順調であったかどうかという判断の試料は皆無であったのに、単に自分が忙しかった事がイコール順調という思いからそう言ったのだと推察される。

(中略)

そうそう名前の事ですが、その時、特に訂正しなかった私のせいでしばらくはその後も吉春社長には須藤君と呼ばれたが、いつの頃からか北島君に変わっていた。今から思うと吉春社長には大変失礼な事をしていたと思うが、名前にこだわるような小さな人ではなかったような気もしていたので、こちらもその気でいた。今も、もしかして同じようなことが起こっているかもしれないね…。

書きながら思いついたのですが、思い出は、思い出そうとすればけっこう出てきますね。もう、二度と味わえないと思うものすごく旨かったビールという水、仕事を教えてくれた作業員、遊びを教えてくれた諸先輩、大上段に構えて議論をした同僚等々、今更ながら皆様には感謝する次第であります。

(略)

─ 40周年記念誌より抜粋 ─

ページトップへ